インスリンの作用不足により、血液中のブドウ糖(血糖=糖質)が高くなる病気です。高血糖が長く続くと、さまざまな臓器に合併症(糖尿病合併症)が起こるリスクが高くなります。
食事などでブドウ糖(糖質)を摂ると、その直後から血液中の血糖値が高くなります。健康な人であれば、膵臓から分泌されるインスリンにより、食後2時間位で血糖値が正常に下がります。ところが、糖尿病の人は、インスリンが少なかったり、その効き目が悪かったりして、血液中のブドウ糖を体内にうまく取り込めず、血糖値が高い状態(高血糖)のままになります。
このインスリンが効きにくい状態を「インスリン抵抗性がある。」「インスリン感受性が低下している。」といいます。
肥満で内臓脂肪が増えると、脂肪細胞から分泌されるホルモンの影響でインスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)になり、血糖値が下がりません。
血糖とは、血液中のブドウ糖のことで、血糖値とは、血しょう1dl中に含まれるブドウ糖の量のことで、糖尿病の指標となります。
健康診断では、空腹時血糖値を測定しますが、その数値が高い場合は、2次検査としてブドウ糖負荷試験血糖値(一定の条件下でブドウ糖を服用した2時間後の血糖値)を測定します。
空腹時の血糖値 | 食後2時間後の血糖値 | |
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正常型 | 60~110mg/dl未満 | 140mg/dl未満 |
境界線型 | 110mg/dl以上~126mg/dl未満 | 140mg/dl以上~200mg/dl未満 |
糖尿病型 | 126mg/dl以上 | 200mg/dl以上 |
※境界線型が、糖尿病予備軍です。
ヘモグロビンとは、赤血球の中にあるタンパク質で、120日(4ヶ月)間、体内を巡りながら徐々にブドウ糖と結合していきます。余っているブドウ糖が多いほど、ヘモグロビンとの結合が増え、ヘモグロビンA1cが多くなります。
ヘモグロビンA1c値は、赤血球の寿命の半分くらいにあたる期間の血糖値の平均値です。
血糖値は、血液検査をした時点での血糖状態なので、その時の状況で変化しますが、ヘモグロビンA1c値は、検査をした日から1~2ヶ月前の血糖状態を推定するので、糖尿病を診断する上で、血糖値よりも正確な血糖状態を知ることができます。
正常値は、4.6%~6.2%(NGSP値:国際標準値)で、6.5%以上ある場合は、糖尿病型と判定します。
低血糖は、血糖値が60mg/dl未満の状態をいいます。
血糖値が70mg/dl以下になると、異常な空腹感、生あくび、かすみ目、手足の震え、冷汗、動悸などの症状が出てくるので要注意です。
低血糖を放っておくと、倦怠感、無気力、頭が重い、考えがまとまらないなどの症状が出て、血糖値が30mg/dl以下になると、意識レベルが低下するので、異常行動、意識消失となり、最悪の場合は、昏睡状態から死に至るので、呉々も早めの対処をして下さい。
インスリン注射や経口血糖降下剤を利用している人が、食事を抜いたり、はげしい運動などでエネルギー消耗が多かったりすると、薬が効きすぎて血糖が下がりすぎ低血糖状態になります。このような方は、糖質制限をすると、低血糖になる場合があるので、注意が必要です。必ず糖質制限をはじめる前にをお読み下さい。
血液中のブドウ糖(血糖)を少なくする(=血糖値を下げる)ただひとつのホルモンです。膵臓のランゲルハンス島のβ細胞で作られるものです。
生命維持のため、からだの細胞は、エネルギーの源であるブドウ糖をつねに消耗しています。食事でブドウ糖(糖質)を摂れない空腹時は、エネルギーを確保するために、肝臓に蓄えられたグリコーゲンを糖に分解し、全身の細胞に放出します。その際、肝臓からのブドウ糖の放出量とブドウ糖の消費量を調整するため、一定量のインスリンが分泌される。これを基礎分泌と言います。
食事でブドウ糖(糖質)を摂ると、血糖値が上昇。すぐにインスリンが追加分泌され、肝臓からの糖の放出は抑えられ、肝臓へ糖の取りこみを促します。約半分の糖は肝臓に取り込まれ、残りの糖は筋肉細胞や中性脂肪に換えられて脂肪細胞として蓄えられることで、血糖値が下がります。
インスリンの基礎分泌と追加分泌により、空腹時の健康な人の血糖値は、70~100mg/dに保たれます。
糖尿病の原因はなりやすい体質や遺伝もありますが、肥満、過食、運動不足、ストレス、加齢、妊娠といったものも原因になりますので、気をつけてください。
糖質の多い食品は血糖値を急激に上昇させます。正常な状態に戻すために、膵臓は大量のインスリンを追加分泌します。インスリンの分泌量が追いつかないと、高血糖の状態が続くことになり、インスリンが分泌される膵臓のβ細胞がどんどん壊れることになり、分泌能力が低下します。
肥満は、糖尿病になる原因のNo.1と言われています。肥満で体脂肪が増えると、脂肪細胞から分泌されるホルモンの作用でインスリンの働きが低下し、血糖値を下げるためには、膵臓からのインスリン分泌が大量に必要となります。この分泌時間が長く続くと膵臓が疲れてしまい、最後にはインスリンをあまり分泌しなくなるのです。
体を動かすエネルギー源は糖です。運動不足になると、血液中の糖が消費しきれず体脂肪として蓄積されてしまいます。体脂肪が増えるとインスリンの働きが悪くなります。
ストレスは、インスリンの作用を弱め、インスリン抵抗性ホルモンを分泌させます。そのためインスリンの働きが弱くなり血糖値が下がらなくなります。
加齢は、膵臓の働きが弱くなりインスリンの分泌量が少なくなります。そのため血糖値がなかなか下がらず高血糖の状態が続いてしまいます。
妊娠中は、胎盤から分泌されるホルモンがインスリンの働きを邪魔するため糖尿病になりやすくなります。通常、出産後に血糖値は正常に戻りますが、戻らない方もいます。妊娠を繰り返すことで、糖尿病リスクが高くなります。
糖尿病は、I型とII型に分類されます。
肥満との関係はありませんが、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が壊れてしまい、まったくインスリンが分泌されなくなります。
発症するのは子供や若い人が多い傾向にあります。最初は風邪に似た症状が出ます。その後、のどが乾く、トイレが近い、急激にやせるなどの症状になり、放っておくとケトアシドーシスに陥るので直ちに治療が必要です。
小児糖尿病の多くは1型でしたが、最近では肥満児の2型糖尿病も増えてきています。
遺伝的に糖尿病になりやすい人が、過食、肥満、運動不足、ストレスなどの生活習慣が原因で、インスリンの働きが悪くなり発症します。
自覚症状がないので、いつ発病したのかわからないまま、人間ドッグや健康診断などで見つかるケースが多いです。日本では95%以上の糖尿病患者がこのタイプになります。
糖尿病の初期は特に自覚症状がないので、血糖値が高いと言われても食事療法や治療を軽視し、気がついた時には怖い合併症になっている人が大変多いです。
脳や心臓の血管が詰まることで起こる脳梗塞と心筋梗塞。そして、癌、アルツハイマー病も糖尿病の人は発生率が高いとされています。
糖尿病の人は、空腹時でも血糖値が高いですが、食後の血糖値は特に高くなります。合併症は、食後血糖値が高い程起こりやすく、特に心筋梗塞や脳梗塞は食後血糖値と深く関連していると言われています。
従来の糖尿病食は、カロリー制限を重視した炭水化物の糖質中心(糖質60%、脂質20%、タンパク質20%)の食事療法なので、食後血糖値をおさえるどころか上げてしまいます。糖質制限は、血糖値を上げる「糖質」に着目した糖尿病の新しい食事療法です。
食品の中で血糖値を上げるのは糖質だけです!低カロリーの食品でも糖質が多いと血糖値は上がってしまいます。糖質を控えることで、食後の血糖値の上昇を抑制し、血糖値を下げるインスリンの追加分泌も減少します。
インスリンの追加分泌が減ると、脂肪の分解を促進します。そして、脂肪をエネルギー源にタンパク質からブドウ糖(糖質)を合成する糖新生が進み、基礎代謝が向上します。基礎代謝が高い程、消費エネルギーが多く必要になるので痩せやすくなり、肥満も改善されるということです。
糖尿病の初期は特に自覚症状がないので、気がつかない場合が多くあります。こんな症状がでていないか、チェックしてみましょう。