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医師推奨の糖質制限食のやり方

糖質制限食の基準は、糖質量であり、カロリー量ではありません。

糖質制限は「カロリー制限が、減量効果や糖尿病の食事療法に適切である。」というこれまでの栄養学の常識を一変しました。
血糖値を上げるのは糖質(=炭水化物-食物繊維)だけなので、糖質を控えると、血糖値を下げるインスリンの追加分泌が抑えられるだけでなく、摂取した余分な糖質を脂肪として体に蓄積するインスリンの太る作用も抑えることができます。

糖質は控えますが、反対に三大栄養素のうち、たんぱく質、脂質、食物繊維は血糖値を上げないので、カロリーを気にせずに、これらの食品をたっぷりと摂ることができます。

 

江部康二医師が推奨する、3タイプの糖質制限食

江部康二医師は、2002年糖質制限食を自身の糖尿病の食事療法として実践。減量に成功しただけでなく糖尿病も克服しました。現在、糖質制限食を多数の糖尿病患者や医師に指導しています。Dr.江部流 3つの糖質制限食のキーワードは、ごはんは控え、おかずはいっぱい食べよう。です。

スーパー糖質制限食

朝食+昼食+夕食〈3食ごはんを抜く〉
もちろん糖質の多い食材(麺、パン、イモ類、根菜、果物、スィーツなど)や調味料も制限します。
糖質の摂取量は、1食あたり10〜20gとし、1日30〜60gを目標にします。

【三大栄養素摂取の目安】 糖質12%、脂質56%、たんぱく質32%

糖尿病の食事療法向きです。最も効果がはやく確実に現れます。

ダイエットやメタボ対策の目的でも、はじめにスーパー糖質制限食をすることで、脂肪を代謝して(使って)エネルギーにする体質に変え、適正体重になったら、スタンダード糖質制限食かプチ糖質制限食に切り替えることを奨めています。

スタンダード糖質制限食

朝食 or 昼食+夕食〈2食ごはんを抜く〉
1日の糖質の摂取量は、70〜100gを目標にします。

【三大栄養素摂取の目安】 糖質27%、脂質45%、たんぱく質28%

1食だけ主食(GI指数の低い玄米など)を食べることができます。継続しやすいため実践している人が多い制限方法です。

プチ糖質制限食

夕食〈1食ごはんを抜く〉
1日の糖質の摂取量は、110〜140gを目標にします。

【三大栄養素摂取の目安】 糖質41%、脂質38%、たんぱく質21%

1食抜くだけの軽い制限なので、糖尿病の食事療法には不向きです。

 

Dr.江部流 糖質制限食10箇条

  • 魚介・肉・豆腐・納豆・チーズなどのたんぱく質や脂質が主成分の食品はしっかり食べる。
  • 糖質の多い食品で、特に白いパン、白米、麺類、菓子、白砂糖など精製された糖質の摂取は極力控える。
  • やむを得ず主食を摂るときは、未精製の穀物(玄米、全粒小麦など)を、日頃の運動量に応じて適量摂るのが好ましい。
  • 牛乳、果汁を避ける。成分無調整の豆乳、水、番茶、麦茶、ほうじ茶などが好ましい。
  • 糖質の少ない野菜、海藻、きのこ類は適量食べて良い。果物は少量にとどめる。
  • オリーブオイル、魚の油(EPA、DHA)は積極的に摂る。リノール酸は減らす。
  • 砂糖未使用のマヨネーズやバターも大丈夫。
  • 蒸留酒(焼酎、ウイスキー、ブランデーなど)は飲んでも大丈夫だが、醸造酒(ビール、日本酒など)は控える。
  • 間食やおつまみなどはチーズ、ナッツ類を中心にして適量を摂る。菓子類、ドライフルーツ類は不可。
  • できる限り、化学合成の添加物の含まれていない食品を選ぶ。

主食を抜けば糖尿病は良くなる2[実践編]著者江部康二より

まちがっている〈自己流〉糖質制限

  • 糖質だけでなく脂質も制限するのはまちがいです。
  • 脂質・たんぱく質は十分摂取して構いませんが、1日3000kcal以上を食べたら、糖質制限食でも痩せません。
  • 甘いモノだけが糖質の多い食品ではありません。砂糖を使用していないせんべい、おかきなども糖質はたっぷりあるのでNG食品です。
  • 野菜でも根菜類、いも類は糖質が多いので注意が必要です。
  • 糖質少ない葉野菜でも、炒めたりして大量に食べるのは困ります。
  • 健康的といわれる食品でも糖質が多ければNG!例えば、玄米、雑穀米、蕎麦は糖質がたっぷりあるので基本はNG食品です。

Dr.江部が食べている「糖質制限」ダイエット・1ヶ月献立レシピ 著書江部康二より

山田悟医師が推奨する、ゆるやかな糖質制限食〈ロカボ〉

糖尿病専門医Dr.山田流は、ごはん抜きが無理!という方におすすめの制限方法です。

ゆるやかな糖質制限食 〈ロカボ〉

1食でごはんを茶碗半膳にします。トーストなら半切れ、イモ類を抜いたおかずを多目にすることで満足感が得られます。また、調味料も余り気にしなくて良いので制限しやすい方法です。

糖質の摂取量は、1食あたり20〜40gの食事を3食摂り、さらに1日10gまでの間食はOK。1日70~130gを目標にします。

山田医師が糖質の摂取量を1食あたり20g以下に定義しないのは、ケトアシドーシスのリスクの可能性を配慮しているためです。ケトアシドーシスとは、糖尿病の高血糖性の急性代謝失調であり、極度にインスリンが不足したりする症状のことで、米国のローカーボ・ダイエットのひとつアトキンソン・ダイエット(1食の糖質が20g以下)により起きた報告があるのみですが、可能性を排除するために、このような定義となっています。

 

リチャード・バーンスタイン医師(米国)が推奨する、
バーンスタイン式ローカーボ・ダイエット

米国はLow-Carbohydrate Diet(ローカーボ・ダイエット)の先進国です。
ローカーボ・ダイエット先進国の中でも草分け的存在のバーンスタイン医師は、糖尿病専門医であり、自身のI型糖尿病の治療法を暗中模索する中、糖質を控えることにより血糖値コントロールが良好になることを発見し、40年間実施してその有効性を証明しました。

バーンスタイン式ローカーボ・ダイエット

炭水化物の摂取量を、1食あたり43g以下で、1日130g以下を目標とします。
山田悟医師が科学的根拠に基づく糖質制限食として位置づけ、2012年の時点では「この数値が最も信頼性が高い。」と評価しています。なお、米国では糖質制限食のことをLow-Carbohydrate(低炭水化物)Dietと呼んでいます。

 

糖質制限食プラスαのやり方

主食は食事の最後に

日本大学グループの研究で、ごはんを食べる時に、たんぱく質、脂質、食物繊維(野菜)のおかずを一緒に摂ると、ごはんだけ、ごはん+2品目(例:たんぱく質+脂質のみ)よりも、食後の血糖値が上がりにくくなることが証明されました〈British Journal of Nutriion誌 2014:Vol.111〉。

そこで、ごはん、パンなどの主食を摂る時は、肉、魚、野菜などのおかずをまず食べてから、最後に摂ることをお奨めします。最初に糖質の少ないおかずをたっぷり食べた後では、主食の量が少なくても満腹感を味わえるので一石二鳥です。

また、ごはんに合うおかずはどうしても味が濃くなりがちなので、おかずだけの食べ方になると、自然と薄味が好みになり減塩対策にもなります。

食物繊維は大切です

食物繊維は糖の吸収をゆるやかにするだけでなく、肝臓での糖の放出をストップさせる作用があるので、血糖値の上昇を抑えてくれます。さらに、食物繊維と糖質の高い食品を一緒に食べると、脂肪組織への糖の吸収が抑えられるので、体に脂肪がつきにくくなります。

海藻類、きのこ類、豆類、木の実は、特に食物繊維が豊富です。根菜類は食物繊維は豊富ですが、糖質が多いので控えてください。

脂質は気にせずに摂りましょう

糖質制限食では、糖質を減らした分、脂質やたんぱく質が増える食事になります。「カロリーの高い脂ものを摂ると太る。」というイメージがありますが、太る原因は糖質であり、脂質ではありません。 ※ 太る原因は、肥満のこと痩せるためのエトセトラ をご一読ください。

肉など摂取は控える必要はありません。日本人は、動物性脂を摂取してもしなくても心筋梗塞のリスクは変わらないこと、さらに脳卒中のリスクは軽減することが、複数の研究機関で明らかになりました。

血流をよくし脳代謝を活発化するEPAやDHAを多く含む魚の油(オメガ3)、血液をサラサラにするオリーブオイル(オメガ9)は、積極的に摂ってください。

話題の中鎖脂肪酸のココナッツオイルは、アルツハイマー病になど脳の老化予防作用があるケトン体をつくります。ただし、糖質を制限していな体では、ココナッツオイルを摂ってもケトン体はつくられません。

控えてほしい油は、リノール酸が主成分の大豆油、コーン油、紅花油(オメガ6)などの植物性油です。必要量は1日1~2gですが、最近の食事では過剰摂取気味です。自然界に存在しないトランス脂肪酸のマーガリンも控えて下さい。また、長時間使用した揚げ油で揚げた食品も、おすすめしません。

アーモンドやクルミなどのナッツ類は、血液をサラサラにする脂肪成分(オレイン酸、αリノレン酸)が多く、小腹が空いた時のおやつ代わりにも活用できる食品です。特に、クルミは、LDLコレステロールや総コレステロールが改善する報告があります。

 

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