低糖質おやつのお店「しまねこや」の遠藤かおりさん(48歳)は、39歳の頃不妊治療を受けていた。母体を綿密に検査するクリニックだったので75gブドウ糖負荷試験まで受け、初めて境界型糖尿病だと診断された。
不妊治療、妊娠、出産、怪我という過程を経て、糖質制限に辿り着いたが、彼女は低糖質だけではなく、無添加、良質の食材も重要だと考えている。そのこだわりは商品だけでなく、家庭料理にも反映しているようだ。
境界型糖尿病と分かった時は、まだ糖質制限を知らなかったので、糖尿病専門医による日本糖尿病学会のガイドラインに基づき1日1600kcal以下の食事制限を始めた。
さらに、不妊治療の医師による指導は、朝の連続運動でホルモンのバランスを整え、代謝をよくすることだった。当時、国立国会図書館員としてフルタイムで働いていたので、早朝起床、出勤前に45分以上のウォーキングは大変だったそうだ。
そして、40歳の時、待望の赤ちゃんが自然分娩で生まれた!3200gの女の子だった。
44歳の時、自転車を運転中に転倒し左手の甲にひどい擦過傷を負った。
従来のガーゼと消毒薬の治療を受けていたが治りが芳しくなかった。そこで「痛みが少なく治りが早い」と聞いていた湿潤療法に切り替えようと、湿潤療法の第一人者 夏井睦医師のサイト新しい創傷治療で見つけた神楽坂医院で治療を始めた。
その後、湿潤療法のすばらしい効果を実感した遠藤さんは、夏井医師が実践し減量や体質改善に成功した糖質制限に興味を持った。
そこで夏井医師の著書「炭水化物が人類を滅ぼす」を手始めに、糖質制限の第一人者である江部康二医師の著書を何冊も読んだ。そして従来の糖尿病治療の概念がくつがえった。
「続けているカロリー制限はひもじくてしんどい。でも糖質制限だと炭水化物(糖質)さえ食べなければ血糖値は上がらないしお腹いっぱい食べてもいいんだ。」と、遠藤さんはスッキリしたそうだ。
最初はゆるやかな糖質制限だった。主食のごはんは食べないが、普通のケーキは食べるということもあった。
しかし、糖質制限を深く学ぶうちに徐々にスーパー糖質制限(1食20g)に移行していった。特にケトジェニックダイエットアドバイザーの資格を取得したことは、より厳格な糖質制限の契機になった。
また”FreeStyleリブレ”を使い、糖質の摂り方により血糖値がどう変動するかモニターした経験も、日々の食生活をどう組み立てるかにとても役立っているという。
多くの糖質制限推奨医師が普通に実践している〈1日1食〉も目指したが、もともと痩せている遠藤さんには実行が難しく、〈1日1食〉タイプではないと自己判断して、3食以上をこまめに食べる食生活を選んでいる。
糖質制限を続けていく中で、いろいろな体格、体質の人がいる。だからこそ、ぞれぞれの人に合った糖質制限を実践したら良いのではと考えるようになった。
ところで、低糖質食品は確かに糖質を控えてはいるが、それなりの味や食感にするために色々な添加物を使用している「もどき食品」がある。
低糖だけでなく無添加にこだわる遠藤さんは「もどき食品」 を食べない。その代わり、糖質量1食20gに控えるスタンスは変わらないが、糖質が多くても良質の食品を”少しだ”けおいしく食べても良いと考えている。
例えば調味料。「もどきの低糖みりん」ではなく、昔ながらの製法で丁寧に作られた本みりんを少量使用している。
季節の果物や野菜は旬のおいしさを少しだけ頂く。糖質は多いがリンゴも少しだけ食べる。人参やカボチャは彩りを添えるために使う。
遠藤さんが作る「しまねこや」の低糖質おやつにはハチミツ使用の焼き菓子もある。地域を大切に考えている遠藤さんらしく、近所の友人が養蜂をしているので、街の花の恵みをありがたく使う。それでも糖質量は普通の焼き菓子の1/4から1/5だ。
パンも同様だ。大豆粉+グルテンパウダーのパンはあまりおいしいと思えないので、全粒粉、海塩、フルーツなどから醸した自家製酵母液だけでシンプルに作ったパンを、少量を楽しんで頂けたらと販売している。
遠藤さんは子供の頃、ガム、チョコレートなどを母親が食べさせない環境で育った。
「ポテトチップスやかっぱえびせん、ポッキーなど、市販菓子の味ももちろん知っています。」と苦笑しながら仰るが、お菓子だけでなく添加物や農薬を気にして、手作りを大切にした母親の食育の影響は、遠藤さんの食のこだわりと気配りを自然に生んだようだ。
遠藤家の食事で何よりもすばらしいのは、本人だけでなく、お嬢さんが5歳の時から、遠藤さんがつくる無添加の低糖質料理を「普通の食事」として食べていること。
お嬢さんのために焼いた低糖質バーズデーケーキは、低糖質スポンジ、サワークリーム入り生クリーム、ブルーベリー、そして糖質の多いデラウェアやアラザンは飾り付けに少量を使用した。デコレーションはお嬢さんと一緒に取り組んだそうだ。
幼少期の食べ物は、味覚形成や大人になってからの食生活にも大きく影響するはずだが、多くの子供達が、スナック菓子、ハンバーガー、カップ麺、コンビニ弁当、おにぎり、パンなど、糖質過多&添加物だらけの食品を毎日口にしている。
一方、無添加のウィンナーをいつも食べているお嬢さんは、普通のウィンナーは美味しくないと言うそうだ。幼少期からの食育は本当に大切だ!
「自分は糖質制限を実践しているが、家族は誰もやっていない。」と言う話をよく聞くが、遠藤家は「家での食事はきちんとしたい。」と、朝食と夕食は低糖質・できるだけ無添加の家庭料理を家族全員で食べている。もちろんたまには外食もするが、普段、きちんとしているから、外食も糖質量は意識しつつ楽しんでいる。
遠藤家の朝食は和食、洋食などオールマイティだが、納豆、味噌汁、自家製ぬか漬けなどの発酵食品を必ず入れるようにしている。
遠藤さんの昼食は自分で低糖質に作る。小学校2年生のお嬢さんは給食があるときは普通の食事だが、弁当を持たせる時はおかずを中心にして、小さなおにぎり1個程度を入れることもある。
お嬢さんは、母親の知らないところで普通のおやつを食べているかもしれないが、そこはあまり気にしない。
大学勤務のご主人も糖質制限を自然に受け入れそれを継続している。自宅で食べられる朝と晩は低糖質・無添加の食事だが、昼食はごはんを控えつつ学食で食べている。
遠藤家の低糖質、無添加、良質の食材を使った家庭料理を少しだけ紹介する。低糖質料理の参考にして頂きたい、
※糖質の多い食品は☆を付けている。但し遠藤流に少しだけ楽しんで食べる!
・サバの塩焼き
・レタスとおかひじきバター炒め
・山羊チーズ
・ふきと油揚げの煮物
・らっきょう
・しいたけ、茎ワカメの味噌汁
・納豆
・新茶 (静岡川根)
・LAWSONのスムージー【糖質5g(エリスリトール除く)】
・こんにゃく麺とターサイ、もやし、豚バラ肉の焼きそば
・マグロ胡麻漬け
・ヨーグルト (生クリームと自家製の低糖質ルバーブジャムをトッピング)
※ ヨーグルトは写真に入っていません。
・うな丼風 (白焼き、ゴボウを味噌と低糖天然甘味料のラカントで煮て島豆腐にON)
・おくらしらす納豆 (梅酢)
・レタスのスープ (昆布、いりこ出汁、MCTオイル)
・焼き枝豆
・チキンソテー
・ターサイ、しめじ、しいたけ炒め (醤油、少しだけ本みりん、チアシード)
・自家製の赤大根漬物
・がんもどきの味噌汁
・ボジョレーヌーボー(赤)
(左のケース)
・キャベツ塩揉み (生姜風味)
・きゅうりぬか漬け
・プチトマト
・無添加ウインナ
・カジキマグロのカレーソテー
・ベビーリーフ
(右のケース)
・干豆腐麺炒め (キャベツ、ピーマン、きのこ、しらす)
・黒米おにぎり☆
・りんご☆
・天然鯛の塩焼き
・海ブドウのサラダ (ゴマ、しょっつる、アマニ油ドレッシング)
・茶碗蒸し
・エビのニンニクオイル焼き万願寺とうがらし添え
・ドジョウインゲンのごま和え鶏むね肉のさき身添え
・お吸い物(湯葉、ワカメ、もずく、ネギ)