コラム


医師に聴いた役立つ糖質制限アドバイス

2015.12.25

医師と話す機会が増えた中で、医師から聞く話は、本やネットにない内容も多く、参考になるだけでなく、尽力する医師の姿も垣間見える。

言の葉では、今回から医師に聴いた糖質制限に関するアドバイスや取り組みなどを、シリーズで紹介する。

第一回は、内科・漢方専門医として糖尿病治療に糖質制限食を取り入れている吉田内科クリニック吉田光範院長の話だ。「私ができることは協力します。」という言葉通り、ご多忙の中、時間を見つけては何度も電話で丁寧に説明して下さった。

Dr.Yoshida

吉田内科クリニック
院長 吉田光範(医学博士)

日本内科学会認定内科医
日本東洋医学会漢方専門医
日本医学放射線学会認定放射線科専門医
日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
日本医師会認定健康スポーツ医
高知県 生まれ   
昭和57年 京都府立医科大学 卒

ホームページ:吉田内科クリニック

 

糖質制限を推奨するきっかけ

6年ほど前、インスリン導入をしていた患者さんが、焼き肉(脂質)をたくさん食べたのに低血糖を起こした。糖尿病の食事療法であるカロリー制限(糖質は60%もあるが、脂質、たんぱく質はわずか20%)の考え方では、カロリーの高い焼き肉は、血糖値を上げるので、低血糖にはならないはずだ。「やはり江部先生が指摘されている通り、血糖値を上げるのは、糖質のみ。」とハタと気がついたそうだ。

吉田先生自らも、スーパー糖質制限食を始めた。さらに、少食も目指し、1日1食もしくは1食半とした。これは食後12時間何も食べないと、腸内の善玉菌が増える。という米国の学術論文を、実際に確かめるためだ。

朝は、コーヒーあるいはカスピ海ヨーグルトのみ。仕事柄、夕食を23時頃に摂るので朝はおなかが空いてない。空腹12時間による善玉菌増加説を実証するにはうってつけの環境だ。さらにヨーグルトによる腸内の改善効果の実証も狙った。昼は、味噌汁+生卵、納豆+生卵、納豆+コーヒー、チーズ。夕食だけ普通に家族と同じおかずを食べる。そして、ごはん、麺、パンは一切摂らないように心がける。

糖質制限食と少食により減量は成功。さらに、体力は衰えるどころか、逆に元気になり、頭もクリアに働くようになった。

 

糖質を食べた後の眠気、だるさ、禁断症状

糖質は、麻薬のようなもので、糖質を摂るとその時は幸福感を得られるが、無くなると禁断症状のように、また糖質を食べたくなる。

甘いものやスナック菓子などを食べると、30分位は「おいしかった!」と満たされた気分になるが、1時間半~2時間後には、眠気とだるさに襲われる。そして、ボーとしてくると元気づけに、それらをまたむしょうに食べたくなる。

この症状は、多くの人が体験していると思うが、糖質摂取によるものだとは気がついていない。

吉田先生は、食べる時にこの負のサイクルを思い出し、仕事の妨げにならないよう糖質を制限する。

糖質制限食+少食により、頭はさえ、身体も軽やかになるので「糖質を食べなくてよかった。」と思うそうだ。この正のサイクルによる爽快さを、何度も何度も、身体と脳にすり込み、教え込んでいる。

 

最初の三ヶ月はシビアな糖質制限で

糖質制限は、即効性があるので、糖質を少量控える食事をダラダラと続けるのではなく、最初の三ヶ月はストイックにスーパー糖質制限食(1日20-40g)をやって欲しい。減量の効果がすぐでるので、やる気がでる心理的効果も抜群だ。特に男性は早く効果が出る。3ヶ月あれば、大概の人は10kg-15kg以上の減量に成功する。

減量に成功したら、ゆるやかな糖質制限食(1日120g以下)にシフトしても構わない。

吉田先生自身も糖質制限により15kg減量に成功した。現在は、朝の体重チェックで食事の量、回数、内容をコントロールしている。

3ヶ月も糖質制限をする意欲のない人は、まず2、3日だけでも、シビアにスーパー糖質制限食に挑戦して欲しい。必ず結果が伴うので、やる気がでるはずだ。

吉田先生の患者さんで、糖尿病の息子と一緒にスーパー糖質制限食を摂っていた母親も、同時に痩せたそうだ。誰かと一緒にやる糖質制限は持続しやすいようだ。

 

糖質制限の効果

糖質制限食を続けていくと、糖質の多い食品が自然と食べられなくなる。

例えば、ラーメンを食べても、麺ぜんぶは食べられず残すようになる。「ラーメンは食べていけないもの!」という糖質制限を始めたばかりの心理的な抑制から、自然に身体が拒否反応を起こすようになってくる。

また、糖質制限は、炎症を起こす病気に効果がある。ニキビ、アトピーは改善する。しかし、真っ赤で乾燥している皮膚の炎症には、効果がないそうだ。

 

糖質を食べたくなったら・・・

糖質制限を実践している患者さんには「甘いものやごはんを食べたくなったら、おいしく、食べようよ!たまにはいいから、罪悪感を持たないようにね!」と指導する。

かくゆう、吉田先生も、たまにケーキやあんこを食べたくなるので、食後何もする必要のない時に、生クリームのショートケーキ、バームクーヘン、赤福などを堪能する。午後診のない日は、喫茶店でコーヒーとケーキの昼食なんてこともあるそうだ。

しかし、吉田先生も患者さんも、身体に負の反応がでるので、結局また糖質制限食に戻る。

意外だが、生クリーム、お好み焼きは、あまり血糖値が上がらないそうだ。食べたくなったら、スポンジが少なく生クリームたっぷりのケーキや、クレープのように薄い生地(小麦粉)に野菜・肉・卵などの具材がたっぷりのった広島焼きを選んで欲しい。

ごはんをどうしても食べたい時は、食事の最後に食べること。くれぐれもおかずと一緒に食べないこと。これは糖質の吸収を遅くするだけでなく、ごはんと一緒に食べると塩分の高いおかずを選びがちになるが、個別に食べると減塩したおかずが好みになってくる。ごはんが最後にでる懐石料理だと思って食事を楽しんで欲しいそうだ。

 

絶対にして欲しくないこと

吉田先生は、電話の向こうで再三こうおっしゃった。

基本的には、糖質制限食+少食を目指して欲しいが、まずは、どんな食べ物を食べたら、自分の身体がどういう風になるか探って欲しい。自分を観察しながら、身体に聞いてみて欲しい。便、肌の調子などでチェック。しかし体重やMBIの数値などを余り気にしすぎず、体調が良ければ、それがベスト!多少ポッチャリしていても構わない。

糖質制限食をシビアにできなくても、この2つのことは、絶対にしないで欲しいそうだ。

1. 精製炭水化物(白米、白いパン、白い麺など)の摂取。
2. 食べ過ぎ。

 

食品による体調と便の変化を観察中

現在、吉田先生は、食品により自分の便と体調がどう変化するかを観察している。

糖質制限をはじめると便が臭くなるそうだが、1年くらい経つと腸内細菌が変化するためか、便のにおいが変わる。

糖質制限食をシビアにすると、下痢症の人は便秘気味に、便秘症の人はさらに便秘気味になる。逆にいうと、炭水化物を摂ると排便量が多くなる。ただし、排便量は、白米、玄米、ラーメン、蕎麦など炭水化物の種類による変化はない。一方、炭水化物を少し摂取した方が、健康便になるようだ。

〈 吉田先生による健康便の定義 〉

・ス~とつながっている太く、長く、きれいな便(30cm位が理想)
・フランクフルトのような、ほどよい茶色、ほどよい柔らかさのある便
・腐敗臭がない。
・ス~と出て終わる排便。

吉田先生は、焼き肉で肉をたくさん食べ過ぎると下痢をするので、玄米や肉食(脂質)主体の食事が、身体にどのように影響するか、便を観察しながら、試行錯誤を重ねていらっしゃる。

宿便 
腸の内視鏡検査をされる吉田先生曰く「宿便はウソ!腸壁に便はこびりつきません。」
検査のため絶食し下剤で便を出したら、腸壁には何も残っていない。宿便をとる目的で断食して排泄した便は、宿便ではなく新陳代謝による粘膜のカスが腸壁からはがれたもの。

 

【追記】糖質制限による減量効果の男女差

糖質制限による減量効果は、男性の場合はてきめんに出る。吉田先生も糖質を極端に控えた時は57kgまで体重が落ちたそうだ。

男性の患者さんへは本人の20代の体重を設定標準体重に推奨している(勿論20代の頃から太っていた方は別とのこと)。

女性の患者さんへは「今までで一番美しく、調子が良く、輝いていた時の体重がベスト。」と説明する。女性は糖質制限の効果の出方に大きな差があるので、体重減少パターンを一概に大丈夫とは言えないところが難しいようだ。単に皮下脂肪型、内臓脂肪型と割り切れない人が多いのが女性のパターンだ。

 
糖質だらけの食品を毎日当たり前のように食べている食生活で、糖質を摂った時、制限した時の身体の反応を体感してほしい。

 

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