コラム


甘い物が止められなかった女医が試みた3つのダイエット・後編 MEC食【File No.3】

2016.10.25

tanakamec産婦人科医田中亜矢子先生(仮名)は、若い頃から甘い物依存症で、実践したレコーディング・ダイエットと糖質制限では、目標の一つである「甘い物依存症」からは脱却できなかった。さらにもう一つの問題であるお腹の張りも改善されなかった。糖質制限では女性には嬉しい効果を体感しつつも、MEC(メック)食へ移行した。

 

MEC食とは

MEC食とは、肉(Meat)、たまご(Egg)、チーズ(Cheese)の頭文字を取り名付けられた。この三品目で1日に必要とされる必須栄養素であるタンパク質、脂質、ミネラル、ビタミンC以外のビタミンが毎日きちんと摂れる。

注)炭水化物(糖質+食物繊維)は、必須栄養素ではないので摂る必要はない。

1日、肉200g、卵3個、チーズ120gを摂るのが基本だ。肉は、鶏肉でも、豚肉でも何でもOK。卵は高価なものでなくてOK。チーズは、モッツァレラ、カマンベール等々、お好みのものでOK。とてもシンプルな食事法だ。

1日の摂取量イメージとしては、8割~9割が肉・卵・チーズ。これで4つの必須栄養素がほぼカバーできる。残りの2割~1割が糖質の少ない野菜(レタスなどの葉もの野菜、ブロッコリー、カリフラワーなど)。ビタミンCはこれで補える。

そして一口30回、よく噛んで食べる

食べる順序は、まずはMECから。次に葉もの野菜を少々。まだおなかが空いていたら、糖質を多い食品(パン、ごはん、麺類など)を最後に食べる。1日3食にこだわらず、おなかが空いた時に(深夜でもOK)食べる。

 

MEC食は、楽!

田中先生は2年以上糖質制限を続ける中で、2013年末に渡辺信幸医師提唱のMEC食を知った。

糖質を控えるだけでなくシンプルな食事法なので「MEC食は楽かも?!」と、MEC食を始めたきっかけだ。

糖質制限では「なるべく糖質をオフにして、肉・野菜・魚をバランス良く食べなければ!」「低糖料理をつくらなければ!」とかなり頑張っていた。これはかなりのストレスだった。

「楽かも」という予想通り、MEC食で料理が必要なのは肉と卵なので、仕事の後帰宅して食事を作る手間はフライパンで焼くだけ。実際の手間だけでなく「〇〇しなければ!」という精神的な負担もなくなった。ストレス解消だ。

 

田中流MEC食

肉、卵、チーズを食べたいだけ食べる。気が向けば葉もの野菜やアボガドを食べる。

  • 朝食 生クリーム入りコーヒー。
  • 昼食 好きなチーズを4,5ピースとアーモンド20粒位を食べるのみ。
  • tanakanuts
  • 夕食 昼食を食べない分、夕食は肉食系女子になりガツンと食べるそうだ。ステーキ肉以外に、豚肉(脂質の多い豚のバラ肉)を食べるが、淡泊な鶏肉は食べた満足感がないので、夕食の食材には使わない。

MEC食をはじめた頃は、意識して30回噛んでいた。今は肉類ということもあり、回数を数えなくてもしっかり咀嚼する食習慣がついた。

肉や卵はそのものが美味しいから、火を通して塩・胡椒だけで美味しく食べられるそうだ。

田中先生のMEC食は、次回の特集記事【レシピ編】スキレットでつくる簡単MEC食 by Dra. Tanaka をご覧頂きたい。わずか10分ほど出来上がる料理ばかりだ。鋳鉄製フライパンのスキレットを使うのが、肉料理を美味しくするコツのようだ。

 

甘い物依存症からの離脱に、ほぼ成功!

田中先生が抱えていた一番の問題「甘い物が食べたくなる。」頻度が、MEC食で激減した。

おなかが空いたら、とりあえず鶏の唐揚げやチーズなどを食べると、お腹だけでなく気分も満たされる。おかげで、甘い物依存症離脱を妨げる低糖スィーツを食べる頻度がぐっと減った。

注)市販の唐揚げは、衣だけでなく、日本酒、みりん、調味料など下味がつき、糖質が多くなっている場合が多いので、気をつけて欲しい。糖尿人は、唐揚げでもNGだ。

〈動物性脂質〉と〈動物性タンパク質〉摂取による脱「甘い物依存症」効果は、抜群だった。

さらに、MEC食は3つの食品をメインに食べていれば良いので「どうしても甘い物が食べたくなったら、ハーゲンダッツ・アイスクリーム(糖質約14g~20g)を1個食べたらいいや。」と気楽に考えられるようになり、逆に低糖スィーツを食べなくなった。

シンプルなMEC食は、特に心理的効果が優れていたようだ。

 

その他の効果

肌の状態が、糖質制限の時よりもさらに改善した。つやつや、プリプリのハリ感・・女性には嬉しい効果だ。

しかし、糖質を摂らないのでMEC食でも痩せるはずが、体重が増加してしまった。女性ホルモンエストロゲンと脂質の関係によると思っているが、今後の課題として自分の体でチェックしていきたいそうだ。

 

MEC食の利点

  • MEC食により、空腹感が減り、昼食抜きでも平気になった。おかげで、昼時の外来対応や長時間の手術中にも、空腹感やエネルギー枯渇感がなく、業務に専念できるようになった。また、休憩時間に食事の代わりに、診察以外の仕事がこなせるので効率がよくなった。
  • MEC食の肉類でエンゲル係数は上がるように思えるが、オージービーフ、USビーフなどを安い時にまとめ買え、さらに惣菜、高価な低糖食材も買わなくなったので、食費は普通に戻った。
  • 野菜を買わなくなったこと。肉、卵、チーズを使うシンプル料理なので、食品のロスが少なくなった。

 

食物繊維を摂らないMEC食

糖質制限では、食物繊維の摂取を唱っているが、MEC食は食物繊維の多い野菜や果物(ごぼう、キノコ類、バナナなど)、こんにゃく、海藻などの摂取を奨励していない。食物繊維が便秘に効くというのも否定的だ。

MEC食推奨医師の渡辺信幸医師によると「ヒトの胃腸では消化・吸収できない食物繊維を大量に摂取したら便は硬く大きくなり、排便困難を引き起こす。便秘症の人は、かえって詰まってしまう。日本人は痔の多い国民といわれるが、その最大の原因は食物繊維の食べ過ぎだ。排便を促すのは、食物繊維ではなく、〈大腸のぜん動〉だ。こんにゃくは低カロリーで胃が膨らむことから人気だが、食べ過ぎた結果として腸閉塞、腸捻転を起こして病院に担ぎこまれる人が少なくない。

 
 

MEC食による排便の劇的変化

さて、田中先生田中先生は、もともとひどい便秘症で、1週間位でないのは当たり前。お通じがあると軟便。そしてまた便秘の繰り返しだった。つねにお腹がはってよく痛くなっていた。おならや便の臭いも臭かった。

糖質制限をはじめた頃には、ケロックのオールブランの小麦ふすま&食物繊維たっぷりのシリアルを食べていた。朝食は、オールブラン40gとヨーグルト100g。毎日「よいうんこ」の排便はあったが、お腹の張りは改善しなかった。

オールブランを止めると、排便量は減ったが、以前よりお腹が張らなくなったと感じていた。確かに、食物繊維で便秘症は改善したが、お腹の張りは直らなかった。

そして食物繊維をほとんど摂らないMEC食を始めてから、排便に劇的な変化があった。

お腹の張りが激減してとても楽になった。排便回数はあまり変わらなかったが、コロコロしたお通じが比較的スムーズに出るようになった。おまけに、おならや便の臭いも臭くなくなった。

 

実体験からの仮説

田中先生は、ご自身の体験から以下のような仮説を立てた。

  • 野菜をたくさん食べても、便秘は改善しない。
  • 食物繊維を食べても、排便回数は増えるが腹満感は改善しない。
  • 炭水化物を減らすと、腸内細菌叢は改善する可能性がある。
  • 肉食では便秘は増悪しない。むしろ腸内細菌叢が改善している可能性がある。
  • 排便は、食物繊維よりも腸内細菌叢が問題なのでは。
  • 低炭水化物食と長期間のプロバイオティクス(ミヤサリン内服)が良いかもしれない。
  • 大腸がんと肉食の関係については、肉食によって腸内細菌叢が良好に保てているのならむしろ大腸がんのリスクは減るのでは。

排便に効果があるといわれる食物繊維よりも、田中先生の場合、MEC食+ミヤリサンの組み合わせが一番お腹に合っていたようだ。糖質制限の第一人者である江部康二先生もミヤリサン服用を奨めている。

同じ糖質を控える食事法だが、MEC食は食物繊維をほとんど摂らない。一方、糖質制限は食物繊維を摂ることを推奨している。さて、皆さんは、糖質を控えながら、腸内細菌叢をどの方法で整えますか。

 

腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)

ヒトや動物の腸の内部に生息している細菌のこと。人では100種類以上、100兆個が生息している。小腸の終わりの回腸から大腸にかけて、腸内細菌が種類ごとにまとまり、びっしり腸内の壁面に生息している。それが植物相(Flora)のようなので、「腸内フローラ」とも言われている。

 

調整薬ミヤリサン

ミヤリサンは、生物でもっとも耐久性があるといわれる芽胞を形成する酪酸菌の宮入菌が主成分の小粒の整腸薬。宮入菌は、熱・抗生物質・胃酸に強いので、腸までしっかり届いてから、胃から大腸まで広い範囲で増殖し、腸内有益菌の働きを高め、有害菌の働きを抑えるので、腸の動きを活発にして腸内細菌叢を整える効果が高い。

同じ整腸薬として有名なビオフェルミンSは、乳酸菌(ビフィズス菌、フェーカリス菌、アシドフィルス菌)が主成分。こちらも生きたまま腸へ届くが、ビフィズス菌は大腸、フェーカリス菌とアシドフィルス菌は小腸に住み着く分布別増殖型。ビオフェルミンSは抗生物質の耐性がないので、抗生物質と一緒に服用すると菌が死滅するので効能がなくなる。

 

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