糖質制限のデメリットは、安価な炭水化物を控え、肉、魚、低糖食品などがメインになるので、どうしても食費が高くなりがちだ。
また、実際に糖質制限を始めると「何を食べてよいかわからない。」との声が多い。
今回は、糖質制限歴&料理歴1年8ヶ月の上総良さんに、エンゲル係数を上げない糖質制限メニューと工夫術を伺った。
上総さんは、現在34歳。身長163cm、体重57kg、ウエスト70cmだが、糖質制限をはじめる前は、体重72kg、ウエスト86cmもあった。
2014年9月、京都で一人暮らしを始めた。食費を浮かせるために、糖質過多の食事になったうえに、システム・エンジニアというデスクワークの仕事になりほとんど動かない生活になった。
上総さんが当たり前のようにおかわりしていたごはん一合(茶碗約2杯弱)の糖質は、103g!もあり、26個分!!の角砂糖を一度に摂っていたことになる。
当時は、ごはん、ラーメン、カレー、お好み焼き、餃子など、とにかく炭水化物ばかりの食事だった。実際のところ、一人暮らしの独身男性の多くが、上総さんのような食事パターンではないだろうか。
上総さんは、一人暮らしを始める前から、糖質が多い食生活だったそうだ。朝食は菓子パンと牛乳を入れたコーヒー。昼食はまかない食。夕食は母親の手料理で、煮物や揚げ物のおかず、サラダ、味噌汁にごはん1合を食べていた。
家族と一緒に食べるために、2週間に1回は仕事帰りにデパートでホールケーキやシュークリームを買っていた。ポテトチップスも大好物で、一度に1袋を食べきるのは当たり前だったが、いつも胃もたれしていた。
一人生活を始め、3ヶ月で15kg太った。しかし、当時、太ったことは、糖質過多の食事が原因ではなく、むしろ、居酒屋の給仕で動く仕事から動かない仕事になったからだと思っていた。
その頃から、「朝起きられない」「ボーとしている」「食後の眠け」の症状がひどくなり日常生活にも支障を来していた。
しかし、会社の健康診断では血糖値も問題なく「太ってはいるが健康である。」と診断されていた。
ある日、糖尿病の食事療法として糖質制限を指導されている第一人者江部康二医師のお膝元が、職場の京都だったことで、糖尿人の同僚から江部医師の名前と糖質制限のことを聞いた。
その後、ネット情報で自分の症状が病気かもしれないと、2015年5月末、糖負荷試験という5時間の血糖値測定により、機能性低血糖であることが判った。
ちなみに糖負荷試験をする病院は少なく、病院探しもネットを利用した。
機能性低血糖の治療法は〈糖質の多い食品を摂らないこと!〉しかないそうだ。こうして、上総さんの糖質制限が始まった。
独身の上に、家族に気を遣うこともない一人暮らしなので、最初から糖質の摂取量が1日30g~60gのスーパー糖質制限を実行し、まずは、主食のごはん、パン、パスタを止めた。
朝食はほとんど食べないが、昼食、夕食に脂質とタンパク質をたっぷり摂るように心がけている。空腹状態で糖質の多い食事を摂れば、血糖値が急激に上がることは理解しているが、時々誘惑に負けてしまうそうだ。
今回、12月中旬~1月初旬までの期間、糖質制限中の朝食、昼食、夕食などをメモに書き留めて頂いたので、参考例として挙げてみた。
外でお酒を飲むときは、食べられるものが多いうえに安いので居酒屋を利用することが多い。
糖質が多く、空腹では糖が一気に吸収されるビールは注文せずに「とりあえず(糖質ゼロの)ハイボール!」。そのままハイボールが続くか、焼酎やウイスキーに変えることもある。
唐揚げ、ししゃも、葉ものサラダ、肉の鉄板焼き、刺身、焼き魚(注:砂糖やみりん使用の煮魚はNG)、漬けものの盛り合わせなどを注文する。
行きつけのアメリカンバーでは、ビーフジャーキー約30g、牛BBQ串2本など肉類のつまみが多い。お酒はもちろんハイボール。
上総さんの場合、お酒の〆はラーメンではなく、寝る前にコンビニの「唐揚げ&ブランパンor肉吸い(うどん抜きスープ)」が食べたくなる。すべて低糖な食品のはずだが、なぜか「唐揚げ&ブランパン」の組み合わせになると、翌日は昼前まで胃の中が気持ち悪く吐き気が続くことが多いそうだ。
糖質制限ではお酒を飲んでも二日酔いにならない。しかし、上総さんが好きなローソン”ブランのパンケーキ”は糖質が12.4g(1袋2個入り)もあり、また添加物も多い。唐揚げの衣や下味は糖質が多くなる。揚げ油も考えられるが、原因は不明だ。
クリスマス、忘年会、新年会が多くなる年末年始は、糖質制限を実践するのがむずかしい。今年も糖質の多い食事を何度も摂ってしまった。
鍋料理の魚、肉、野菜、豆腐などは低糖なので問題はないが、最後の〆が問題だ。忘年会では〆にうどんを、新年会ではフグ雑炊まで平らげてしまった。
また、友人と会う機会も多く、昼食や夕食に、大好きなハンバーガーやラーメンも食べてしまった。
行きつけのバーの年越しイベントでも、糖質の多い食品とわかっていたが、おでんの練りものやおせち料理をつまみ、「せっかく食べるのなら良いものを!」とマスター手打ちの年越し蕎麦まで食べてしまった。
おかげで、年末年始の2週間ほどで、体重は1.5kg、ウエストも4cm増えた。いつもは2、3日ですぐ内臓脂肪が落ちるのだが、今回はすぐに落ちる気配がなく、元に戻るまでに10日を要した。
上総さんは、低糖食品のネット購入を控え、糖質制限食をほとんど自分でつくる。確かに、安価な炭水化物メインの食事より高くはなるが、外食をしなければ1日1000円(朝食、昼食、夕食、間食込み)以下でまかなえるそうだ。
高い食材の肉に関しては、いろいろと工夫している。
糖質制限でごはんを止めると、炊飯器の出番がなくなる。糖質制限実践者には、炊飯器を捨てる人もいる。しかし、上総さんは、炊飯器でローストビーフ、鶏ハム、豚の角煮、大根の煮物などの糖質制限料理をつくる。
そこで、特集【レシピ編】では、上総さん直伝「炊飯器でつくるローストビーフ」などをご紹介する予定だ。普通の肉でも美味しいローストビーフが簡単につくれるそうだ。
◎ 意識がポジティブに変化します
上総さんは、15kgと体重が落ちたので、今まで着ていたすべての服を買い換える出費が発生した。確かに、これはディメリットだったが、同時期にメリットになる大きな意識の変化が起こった。
太っていた頃は何を着ても似合わないとあきらめていた。しかし、痩せたのでお洒落をしたくなり服装を変えた。無頓着にしていた長い髪も切り髪型も変えた。
周りからは「急にお洒落になったね。」「彼女ができたの?」と言われたそうだ。
◎ 1つだけ食べて良い糖質の多い食品を、自分で許可する!
これは糖質制限を続けるコツだ。
上総さんの場合は、ハンバーガーが止められない。2週間に1度位は、マクドナルドのエッグチーズバーガーとチキンクリスプを食べる。ただし、ポテトなしで、ドリンクはウーロン茶をオーダーする。
◎ 病名を利用する
「危ないから糖質制限は止めた方がいい。」と、糖質制限を誤解している人から言われることがある。そういう時には「機能性低血糖の治療には糖質制限しかない。」と伝えると、一般の人は耳慣れない病気なので判断ができず「そうなのか。」と納得する。
糖質制限を理解せずイメージだけで反対する人へは、この一言が効く。
今回、京都で取材に応じて下さった上総さんは、肥満だった頃の面影は全くなく、お洒落な出で立ちだった。これからもエンゲル係数を上げない糖質制限を目指すそうだ。