人が新しいことを始める時に、2割が前向き、6割が日和見で、2割が反対。または8割が新しいことを嫌がるそうです。糖質ばかりの食生活を180度転換して糖質を控える食生活に変えられる人は「2割の前向きなタイプ」とも言えます。そこで糖質制限のメリット・デメリットは、特に「6割の日和見タイプ」の人に読んで頂き、意気につながればと思います。
糖質制限の大きなメリットは即効性のある効果と言えます。
糖質制限では、血糖値を上げる糖質を摂らないので食後の血糖値はほとんど上がりません。つまり、糖尿病の血糖値コントロールに有効的です。
但し、経口血糖降下剤やインスリン注射をしている糖尿病患者さんは、低血糖発作を起こす可能性があるので、糖質制限をはじめる前に必ず糖質制限推奨医師と相談してください。また、1型糖尿病の患者さんは、糖質制限食で血糖値が良好になったとしても、医師の判断なしにインスリン注射は絶対に中止しないで下さい。
同様に血糖値が上がらないと太るホルモンのインスリンが分泌されないので、太る要因がなくなります。
糖質を控える量によりますが、3食ごはん抜き、糖質量を1日60gに抑える《スーパー糖質制限》を実践すると、内臓脂肪の多い男性の場合は1,2週間で2,3kg、1ヶ月5kg程度の減量はできます。一方、皮下脂肪の多い女性の減量効果は男性よりもゆるやかです。
通称メタボは、肥満(内臓脂肪型)に加え、高血圧、脂質異常、高血糖のうち2つ以上の症状を併せもっている状態のことを指します。
体重が減少するので、血圧は正常になります。また、脂質異常の症状である中性脂肪とLDL(悪玉コレステロール)の値は下がり、HDL(善玉)コレステロールの値は上がるため。高血糖も改善されます。糖質制限を実践して健康診断のこれらの数値が正常になったという話はよく耳にします。
次に掲げるメリットです。糖質制限は《糖質量基準》なので、カロリー制限ダイエットでNGだった食品をたっぷり召し上がれます。
カロリー制限ダイエットと違い、食べる量が制限されないので、空腹を我慢する辛さはありません。
糖質制限によりエネルギー源が糖質(グルコース)から脂質を使うケトン体体質に変わります。よって、エネルギー源となる低糖質かつ高カロリーの肉類、チーズ、バター、マヨネーズ、オイルなどはお奨めの食品です。肉類についている脂身もどうぞ召し上がって下さい。但し、焼き肉などは糖質の多いタレではなく塩とこしょうの味つけで。
脂質がOKなので、炒め物、揚げ物などの油を使った料理が食べられます。但し、揚げ物の衣は糖質が多いので外して召し上がって下さい。中華料理でとろみをつける片栗粉は糖質が多いのでこちらも注意が必要です。
糖質の多い食品群を控えるだけなので、食事品目のめんどうなカロリー計算が必要ありません。
【学ぶ】糖質の多い食品と少ない食品 でどんな食品を控えるべきかチェックしてみて下さい。
いくら高価なスーツやファッショナブルなドレスを着ていても、ポッコリおなかやムッチリ背中ではイメージが半減してしまいます。スマート体型になってユニクロをお洒落に着こなして颯爽と歩いて下さい。「別人!」「若返った!」と言われるはずです。
デメリットも解決策があります。
取り巻く食環境は糖質の多い食品であふれています。そしてある年齢になると糖尿病になるのが当たり前のご時世ですが、それは”甘くても甘くなくても”糖質過多の食生活を毎日続けているからです。
病気になってはじめて健康のことを考えるのではなく、健康長寿を目指して2割の前向きタイプへ食ベクトルを変えてはいかがでしょうか。
お昼に定食、おにぎり、カップ麺、カレー、うどん、ラーメンなど食べていたサラリーマン、ごはんに合う献立を考えていた主婦など、糖質制限を始めると「何を食べて良いのかわからない」という人が多いのも事実です。
脂質とタンパク質が摂れる肉類、豊富なタンパク質とミネラルが摂れる卵をはじめ魚介類、チーズ、ナッツ類などをたっぷり召し上がって下さい。
焼く・煮る、塩とこしょうのシンプルな料理が増えてきます。ごはん無しの食事は自然と減塩になっていきます。またケトン体体質になると3食をきっちり摂らなくても活動的に動けるようになってきます。実際に糖質制限実践派医師の多くは1日1、2食です。
糖質制限推奨医師の田中亜紀子先生は間単に取り組めるMEC食(Meat, Egg, Cheese)を勧めています。【寄稿】糖質制限推進派の女性医師が勧めるMEC食~糖質制限をおいしく簡単に続けるために~ をご一読下さい。
低糖質のレシピ本もたくさん出ています。Pocorinもレシピを掲載中です(レシピで検索して下さい)。
ごはんをはじめ炭水化物(糖質)でおなかを満たしていた食生活から、肉など低糖質おかずがメインの食生活に変わるので、実質的には食費が高くなります。また、低糖質のパンやスィーツなども価格は高めな上にネット購入では送料がかかるので全体的に食費が割高になるように思えます。
しかし、糖質制限実践者(低糖人)は色々な工夫をしています。脂肪を気にすることがないので安いバラ肉、ラードなどを利用したり、余計な食材やあれこれおやつを購入しなくなるので逆に無駄な出費は減ります。
ある低糖人の工夫術は参考になります。エンゲル係数を上げない糖質制限の工夫術【File No.5】
別な観点ですが、体質改善が成されるので病院通い、薬代など医療費は軽減傾向になります。
糖質制限を始めると、家族、友人、会社の同僚など、糖質制限に理解がない限り特異な目で見られることもあります。また、減量してスリムになった体型を快く思わず「不健康に見える」「糖質を摂らなければ体を壊す」等と不適切なことを云う人もいます。”糖質制限教”と揶揄する人もいます。
こうして周りの目を気にして、仲間はずれになりたくないからと糖質制限を止める人もいます。しかし、病気になっても他人は変わってくれません。体の声を聴きながらどの食生活が適切なのかを考えてみて下さい。
日頃から糖質を過剰に摂取している人は、絶えず糖質を食べていないとイライラしたり気分の抑揚が激しいです。糖質を摂り血糖値が上がると陶酔感と幸福感に満たされますが、血糖値が下がり始めると糖質をまた摂りたくなるという悪循環になりがちです。ポテトチップスが止まらない。スィーツを食べるとまた欲しくなる。という人は糖質依存症になっています。
糖質は依存性(中毒性)があるので、糖質制限だけでは脱却は大変難しいかもしれません。強い意志も必要となってきます。
塚本雅俊医師が釘を刺す「糖質はアルコールや麻薬以上の依存性物質だ!」をご一読頂けると糖質依存の怖さが判ります。
現在、日本では糖尿病の食事療法として公式に認められているのはカロリー制限だけです。
糖尿病患者がかかりつけの医師に糖質制限を相談する場合、通常は反対されるケースが多いようです。しかし、臨床医を中心として糖質制限を取り入れる医療機関は増えてきていますので、まずはセカンドオピニオンとして糖質制限推奨医の意見を聞くことからはじめてみては、いかがでしょうか?
※ 糖質制限推奨医師は医療情報から
2014年6月【日経メディカルOnline:医師1000人に聞きました】によると「糖質制限ダイエットを指示しますか?」という質問に対し、回答した2263人の医師のうち約6割の医師が肯定しているという実態が明らかになっています。
現在、日本にはどのような糖尿病患者に対する安全且つ有効なガイドラインがありません。しかし実際には糖質制限推奨医師は糖尿病患者の症状に合わせた適切な糖質制限の指導を行い血糖値コントロールは良好のようです。