特集記事 辟穀(へきこく)- 2000年前の「穀物は不要である。」という養生法 に掲載されている奈良県の山中純一さんは、現在54歳。糖尿病ではないが、アレルギー性鼻炎に長年苦しんでいた。ところが、4年前にはじめた糖質制限のおかげで、減量だけでなく、アレルギー性鼻炎も顎関節炎も治ってしまった。
小学6年生の時にヴィールス性の髄膜炎と腎臓病を患い1年間の入院生活で、健康のありがたみを痛感。それ以来、食の大切さ、導引やヨガなどの養生法にも感心を持つようになった。
2008年から5年間の単身赴任中には、外食はせず、バランスの良い完璧な食事(ごはんあり)を摂っていたそうだが、177cm、80kgの太め体型。そこで減量のため週末2日間は50km~100kmのサイクリングをこなした。体重は10kg減となったが、結局5kgリバウンドしてしまった。
【糖質制限前の昼食:自家製のミョウガ酢漬け・大根おろえ・スダチ・牛肉の味噌炒めのトッピングと”こだわり”のうどん】
その頃読んだ『老いを防ぐ「腎」ワールドの驚異-中国医学のアンチエイジング』著者 小高修司で、江部康二医師の糖質制限を知り、ネット、書籍などで自分に合う食事療法か調べたそうだ。
そして、2012年7月、50歳の誕生日を迎かえたことを機に、体質改善、減量のため糖質制限を始める。
偶然にもその年の年末に、山中さんが興味を抱いていた辟穀(へきこく)に関する論文『穀食忌避の思想 – 辟穀の傳統をめぐつて 』著者 麥谷邦夫氏の東方學報 (2000), 72: 181-212)に出会う。
当初、辟穀は断食だと思い、自分には無理な療法だとあきらめていたが、体をいじめるのではなく、糖質を控える養生法だとわかる。さらに、2000年以上前に穀物は不要という辟穀と糖質制限が同じ理論なので、新旧の断穀法(糖質制限)が「体に良い食事法だ。」と確信を得たそうだ。
最初から スーパー糖質制限食を決行。5年間の単身赴任では、家族に気を遣う必要がない自分だけの食事なので簡単に続けられたそうだ。
現在は、朝食 ブラック・コーヒーだけ。昼食 コンビニで購入するゆで卵と社員食堂の味噌汁。夕食 ごはんは食べないが、家族と同じ献立を摂る。糖質の多い衣はあるがフライも食べるし、うどんが出されればそれも食べる。朝食が糖質ゼロ、昼食も味噌汁の具材次第だがほぼゼロなので、夕食が普通食でも1日の糖質量60gには大概収まっているのがポイントだ。
【糖質制限中の昼食】
最初の頃は、糖質の多い食品をすべて把握している訳ではなく、既存概念の健康食品も摂っていた。βカロチンが豊富、目に良い赤色野菜として、朝食に人参ジュースを飲んでいたが「健康に良いはずなのに、なんで元気がでへんのやろう?」と思っていたそうだ。人参などの根菜は糖質が多い野菜なのでNG食品だ。ちなみに、人参ジュースは、糖質が12.6~12.9g/180cc(コップ一杯分)もある。
スーパー糖質制限の他にも、興味のある神仙術にある呼吸法なども取り入れ、朝、昼を抜くプチ断食も行ったそうだ。
コラム記事医師に聴いた役立つ糖質制限アドバイスで、吉田内科クリニックの吉田先生が12時間断食の話を西洋医学の観点からしているが、東洋医学でも、1日に12時間は絶食して、胃腸を休めることが、昔から推奨されている、と東洋医学にも詳しい山中さんのアドバイスだ。
ハードなサイクリングによる減量では、リバウンドしてしまったが、糖質制限を始めて4年が経つが、現在は177cm、 65キロ~68キロの体重をキープしているそうだ。
糖質制限をはじめた頃は、めまいに襲われたそうだ。さらに1年位すると円形脱毛になった。しかしこれは好転反応だと判断して糖質制限を続けた。糖質制限は減量や血糖値のコントロールには即効性があるが、本当の意味での体質改善には2,3年かかると実感した。
そして、40年以上苦しんできたアレルギー性鼻炎はほぼ完治した。山中さんのアレルギー性鼻炎の症状はひどく、通勤電車の中でも勤務中でも鼻水が止まらない。鼻血も頻繁にでて、ひどい時は、朝起きると布団、シーツが血だらけということも多々あったそうだ。
睡眠中の鼻づまりがひどく無意識に口呼吸をしていた原因で発病した顎関節炎も、アレルギー性鼻炎の完治と同期するように治った。
糖質を摂らなくなるとシャンプー不必要のシャンプレス体質になるが、山中さんもシャンプレス体質に代わった。
たまに気がゆるみごはんを食べると、夜こむら返りになり激痛に襲われるので、その度に後悔するそうだ。こむら返りは、糖質制限を始めると起こる人がいるようだ。
先日「ごはん抜きの糖質制限は、まわりの目が気になり、続けられない。」という記事を読んだので、社員食堂でごはん抜きの簡素な糖質制限食を摂る山中さんの心情を伺った。
人の目より、病気の苦しみの方がつらいから気にしないそうだ。
社員食堂で卵と味噌汁という食事は特異かもしれないが、病気の生活に戻りたくない思いが強い。アレルギー性鼻炎の再発を予防したいだけでなく、アレルギー性鼻炎薬の副作用による緑内障をこれ以上進行させたくないことも理由の一つだそうだ。
山中さんの出身奈良県吉野地方では、朝・昼・晩と「おかいさん」の愛称がある茶がゆを食べる。番茶、ほうじ茶、粉茶などを用いて、冷やご飯を入れて炊く。粘りがなくサラサラした熱いおかいさんを常食にしているので、胃潰瘍から胃がんになる人が非常に多いそうだ。ごはんは決して消化の良い食品ではないのだが、昔から定着した食生活による病気の症例だ。逆にいうと、糖質制限でごはんを控えた人の逆流性胃炎が治るのも当然だと言える。
さらに、おかいさんのおかずには、塩辛い魚の干物が定番だそうだ。ごはんに合うおかずは、塩気の多い味の濃いものが好まれる。糖質制限では、ごはんを控えおかずがメインになるので、自然と薄味おかずに慣れてくる。つまり減塩にも一役買うことになる。
三食ごはんを摂っている吉野の人達が太っていなかったのは、重労働の林業に就いていたからだと。
最後に、おかいさんやごはんばかりの幼少時代の食生活を振り返り、子供の頃から粘膜が弱く蓄膿症によくなったことも、過度の糖質摂取によりアレルギー体質になったのでは、と語ってくれた。